2010年代の電子工作

こだわりPCM2704 USB-DAC


Part2 : 製作編
<<Part1 : 設計編

基板の発注

今回は基板をSeeed StudioのFusion PCBへ発注しました。

PCB
10枚(50%Eテスト)注文し、Eテスト済み5枚、未テスト7枚の合計12枚が届きました。経験上、サイズ制限の7~8割程度の大きさの場合、2枚おまけしてくれます(今回は50x34mm)。
普段は真空パックのようなものの中に基板が入ってきますが、今回だけはなぜか普通のビニールチャック袋でした。

FusionPCB

8月17日の夜に注文し、9月1日に到着しました。毎回注文から2週間前後で到着します。急いでいる時はHong Kong Postではなく、20ドルのDHLで送ってもらったほうが確実に早いです。

部品の注文

ICなどの電子部品のほどんどはDigikeyへ注文しました。Digikeyを使うようになってから、秋葉原へ買い出しに行く回数がかなり減りました。

Digikey Box

Digikeyのすごさはそのスピードと安さです。

Digikey UPS Tracking

8月25日の日本時間で深夜12:44に注文し、翌日26日の午後3:32に受け取りました(追跡の時刻は各地点の現地時間です)。注文から約39時間、発送から約36時間でアメリカから届いたことになります。
しかもDigikeyのすごいところは7500円以上の注文はこのUPS Worldwide Saverによる超高速国際宅急便が送料無料です。
個人相手にここまでやってくれるのはホビーストにとってはとてもありがたいことです。

はんだステンシル

今回は新たな試みとして、表面実装部品のリフローはんだ付けに挑戦してみました。 そこで、はんだペースト(クリームはんだ)をはんだ付けする部分だけに塗布するためのはんだステンシル(はんだマスクが必要になります。 量産する場合は、ステンレスでできたステンシルを使用しますが、1つで数万円もするのでとても注文できません。 海外では、30ドルでカプトンやマイラーフィルムのステンシルを製作する業者がいくつかありますが、日本までの送料が高いです。 そんな中、ネットを閲覧していると、Indoor Airplane World という方がカッティングマシンでステンシルを作っている記事をみつけました。
この方法でステンシルができるなら、初期投資の2万円以降はほぼ無料でステンシルを作れると考え、GRAPHTECのCraft ROBO CC330-20を購入しました。

Craft ROBO

DesignSpark PCBからパッドのみのパターンをPDFで出力し、DXFファイルに変換した後、クラフトロボでカットしました。 ガーバーからDXFへ変換できるソフトを所有している場合はPDFにする必要はありません。

Stencil

今回の最小ピッチは0.65mmですが、きれいに加工出来ています。0.5mmぐらいまでは頑張れそうです。(ステンシルの材質は100均のラミネートフィルム(100μm厚)です)

リフローはんだ付け

まずは、基板の上にステンシルを固定し、はんだペーストを塗布します。そしてヘラなどではんだを伸ばすと右下の写真のようにはんだ付けする部分だけにはんだが塗布されます。
PCB Stencil  はんだが塗布された基板

はんだが塗布された基板にピンセットで1つずつ部品を載せていきます。はんだペーストに粘着力があるので、部品は乗せるだけでもずれたりしなくなります。
ピンセットで部品を乗せる

部品を全て乗せたらあとは加熱してはんだを溶かす(リフロー)するだけです。オーブントースターやホットプレートでやる人が多いようですが、食品を扱う道具なので、リフロー専用のものを用意しなければなりません。 しかし、オーブントースターなどはがさばるので、私はアイロンで代用します。

アイロンでリフロー
自分よりも年上の年代物ですが、このような物で十分です。

設定温度を最高にしてあとははんだが溶けてリフローするのを待つだけです。30秒後ぐらいには部分的にリフローし、1分後には全てリフローが終わります。 この際に多少なりとも有毒ガスが発生しますので、換気には十分に注意してください。(といっても、普通のはんだ付けよりも発生量は少ないでしょう。)

リフローが終わったらアイロンの電源を切り、はんだが冷えて固まるまで待ちます。固まったら、アイロンから移動して冷ましてください。

リフロー後の基板
リフロー後の基板

このやり方なら、ICの裏に放熱パッドがあるHTSSOPやBGAなどのパッケージもはんだ付け出来そうです。

あとはコンデンサなどのリードつき部品をはんだごてではんだ付けし完成です。

PCM2704 DAC  PCM2704 DAC
PCM2704 DAC  PCM2704 DAC


追記(2011年9月30日)
DACボードの製作工程を紹介するビデオを公開しました。どうぞご覧ください。



評価

見た目の評価はとても良いと思います。市販の製品と同レベルに達していると思われます。

音質の評価は以下のヘッドフォン・イヤホンで行いました。

Sony MDR-EX500SL (感度:106dB/mW、インピーダンス:16Ω)
Sony MDR-Z150 (感度:98dB/mW、インピーダンス:24Ω)
Etymotic Research ER-4P-B (感度:108dB SPL、インピーダンス:27Ω)

私はオーディオは初心者に近い状態ですが、PCM2704の音質は解像度が高く細かい音まで表現出来ています。またカップリングコンデンサを680μFと大きめにしたおかげで低音も十分に出ています。

しかし少し残念なのがホワイトノイズの多さです。今回は電源のノイズの少なさにこだわりましたが、PCM2704のDACのSN比が98dBとやや低いので、 感度のいいMDR-EX500SLとER-4P-Bでははっきりとノイズが聞こえます。低感度なDR-Z150とBER-4P-Bにアッテネータ(ER4P-24)を付けた時はノイズは聞こえませんでした。
またMDR-EX500SLとER-4P-Bを接続し、基板へ電源のみを供給したときはこのホワイトノイズは聞こえなかったことから、やはりPCM2704のSN比の限界だと思われます。

今後の予定

PCM2704のSN比が低いため、やはりより性能のよいDACをUSB接続したくなるものです。
音質の改善として高性能DACをPCM2706でI2S接続したり、PCM2702をつかったりすることが考えられますが、いずれも16bit、48kHzまでしか対応していません。 せっかくなのでUSB Audio Class 2 に対応したDACを作ってみたくなります。

しかし、現段階でUSB Audio Class 2 に対応するICはGFEC社のTenor TE8802LとXMOSしか見当たりません。 またTenor TE8802Lは詳細が不明な上、入手が不可能に近いと思われるので、実質XMOSしか選択肢はありません。 ただ、XMOSは様々な応用が考えられるほか、低価格でUSB Audio 2.0 Reference Designが販売されているので試してみる価値はありそうです。

今後時間を見つけ次第、XMOSチップをつかったUSB Audio Class 2対応のDACボードに挑戦してみたいと思います。

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追記:販売検討中

最小購入単位の関係でいくつか余りましたので、今回製作したDACボードを販売できないか検討中です。

販売価格は5000円以下を目標にしております。
現段階では部品など全て実装済み(完成品)の状態での販売を予定しております。

追記(2011年9月29日)

WebShopビスパで委託販売を開始しました。
商品ページはこちら

私の未熟さゆえすべてが完璧ではありません。購入にあたり、以下の点はご了承願います。

シルクスクリーンのズレ
DCラインフィルタ(エミフィル)とシルクスクリーンが1mmほどずれています。(動作には影響ありません)

表面実装抵抗
本商品の半田付けはこのページで紹介しているアイロンによるリフローで行っており、表面実装もきれいに仕上がっております。 しかし部品を基板上に配置する作業は手作業なため、上の写真のように、やや斜めになって実装されているものも一部ございます。 動作には影響ございませんが、ご了承願います。

ご質問、ご提案などありましたらメールお待ちしております。

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